国民生活センターによると、「近所で工事をするので挨拶に来た」などと言って突然訪問し、点検のふりをして不安をあおり、工事の契約をさせる「点検商法」のトラブルが増えています。屋根工事の点検商法に関する相談は、2022年度に過去5年で最も多くなり、2018年度の約3倍に増えました。契約した人の8割以上が60歳以上です。
こうしたニュースを見聞きしたお客さんは、塗装業者に対して「本当に信用できるのか」「高い工事を押し付けられないか」という警戒心を持っています。真面目に仕事をしている地域の塗装店も、最初は「悪い業者かもしれない」と疑われるところからスタートしているのです。
外壁塗装の集客には、他の業種にはない大きな特徴があります。それは、お客さんが業者を「警戒している」ところから始まるということです。この記事では、その特徴を踏まえたうえで、地域の塗装店が選ばれるための集客の順番を解説します。難しい専門用語は使わずに説明します。
お客さんは、何を見て塗装店を選んでいるか
住宅リフォーム推進協議会の調査では、リフォームを検討している人が事業者を選ぶときに重視する点として、「工事の質・技術」が27.0%で最も多く、「工事価格の透明さ」などが続いている、という調査結果があります。年度によって数値は更新される可能性があるため、最新の調査もあわせて確認しておくとよいでしょう。
同協議会の調査では、リフォームを検討するときの情報源として、インターネットがチラシや広告誌、知人からの紹介を上回って1位になっている、という結果も報告されています。
ここから分かるのは、次の2つです。
- お客さんは「安さ」だけで選んでいるわけではない。技術と、価格が分かりやすいことを重視している
- その判断材料を、インターネットで調べて集めている
チラシで知った塗装店も、知人に紹介された塗装店も、お客さんは一度ネットで調べます。そのときに何も出てこなかったり、情報が少なかったりすると、警戒心は解けません。
集客の流れ:依頼までの6段階
外壁塗装のお客さんが、依頼を決めるまでの流れを6つの段階に分けて整理します。他の業種との一番の違いは、「知ってもらう」と「比べてもらう」の間に、「信頼してもらう」という段階があることです。
| 段階 | お客さんの気持ち | 塗装店がやること | 使う道具 |
|---|---|---|---|
| ① 知ってもらう | 「そろそろ塗り替えかな。どこに頼めばいいんだろう」 | 地域での存在を知ってもらう | Googleマップ、チラシ、現場の看板、紹介 |
| ② 信頼してもらう | 「この業者、ちゃんとしてるのかな。訪問販売と同じじゃないよね」 | 「顔が見える、実在する会社」だと伝える | ホームページ、会社の情報、資格、施工事例 |
| ③ 比べてもらう | 「他の業者と比べて、高くないかな」 | 価格と工事内容を分かりやすく示す | 料金の目安、見積もりの説明、施工事例 |
| ④ 相談してもらう | 「見積もりを頼んだら、しつこく営業されないかな」 | 相談のハードルを下げる | 問い合わせの方法、現地調査の流れ |
| ⑤ 依頼してもらう | 「この人なら任せられる」 | 丁寧な説明と、分かりやすい見積書 | 現地調査、見積書、保証の説明 |
| ⑥ また頼んでもらう・紹介してもらう | 「いい仕事だった。次もお願いしたい」 | 工事後もつながり続ける | 定期点検、年賀状、紹介の仕組み |
①から順番に、止まっている場所を一つずつ直していくのが基本です。特に②で止まっている塗装店が非常に多いのが、外壁塗装の集客の特徴です。
最初に決めること:「どの地域の、どんな家の塗装店か」
6つの段階に入る前に、一つだけ決めておきたいことがあります。対応する地域と、得意な仕事です。
「関東一円、どんな工事でも対応します」より、「〇〇市とその周辺で、築20年前後の戸建ての塗り替えを得意としています」の方が、お客さんには「地元の、頼れる塗装店」に見えます。
元請けの仕事を増やしたいなら、特に地域を絞ることが有効です。地元の塗装店の一番の強みは、近くにいて、何かあったらすぐに来てくれることです。これは、遠くから来る大手や訪問販売の業者には真似できません。
段階ごとにやること
① 知ってもらう
Googleマップに載せる:「〇〇市 外壁塗装」「近くの塗装屋さん」と検索したときに地図に表示されるのが、Googleビジネスプロフィールという無料の仕組みです。自宅を事務所にしていて住所を公開したくない場合でも、住所を出さずに対応地域を示す形で登録できます。登録の手順は、Googleビジネスプロフィールの登録方法で解説しています。
施工中の現場を「看板」にする:塗装店にとって、今まさに工事している現場は、最高の宣伝の場です。足場に会社名と電話番号の入ったシートを掲げる、工事前に近所へ丁寧な挨拶をする。丁寧な仕事ぶりを近所の人が見ていて、「次はうちも」と声がかかることは少なくありません。
チラシ・ポスティングは「地域を絞って、繰り返し」:チラシは今でも効果のある方法ですが、1回撒いただけで反響を期待するのは難しいものです。施工中の現場の周りなど、地域を絞って、繰り返し配ることが有効です。チラシには、必ずホームページの案内を入れます。チラシを見た人の多くは、すぐに電話せず、まずネットで調べるからです。
② 信頼してもらう(外壁塗装で最も重要な段階):知ってもらったお客さんが次に確かめるのは、「この業者は信用できるか」です。点検商法のトラブルが増えている今、ここで止まっている塗装店が非常に多いのが現状です。
「訪問販売の業者と違う」と伝えるために、ホームページに載せたいこと:
- 代表者の顔写真と名前:「誰が来るのか」が分かるだけで、警戒心は大きく下がります
- 会社の所在地と、地域での歴史:「〇〇市で〇年」という事実は、突然やってくる業者との一番の違いです
- 資格と許可:一級塗装技能士などの資格、建設業許可を持っていればその許可番号
- 施工事例:実際に塗り替えた家の写真と、どんな状態の家に、どんな塗料で、どう工事したか
- 保証とアフターフォロー:工事後の保証の内容と期間、定期点検の有無
- 「突然の訪問営業はしていません」という一言:訪問販売を警戒しているお客さんにとって、これだけで安心材料になります
お客さんの中には高齢の方も多いため、実家の塗り替えを考えている子ども世代の家族が、代わりにネットで業者を調べることもあります。家族が見て「ここなら親を任せられる」と思えるホームページかどうか、という視点も重要です。
ホームページを作り直すか迷っている場合は、制作会社によっては契約前にデザイン案を見せてくれるところもあるので、「自分の会社がお客さんにどう見えるか」を確かめてから決めるのも一つの方法です。
制作現場から
塗装店のサイトで反応が変わりやすいのは、「代表の顔・所在地・地域での年数・突然の訪問はしない」が最初の画面で分かることです。施工写真だけが並ぶ構成だと、点検商法を警戒している来訪者には会社の実在感が伝わりにくい。ヒアリングでは施工事例の前に、顔と地域の履歴を先に置く案を出すことが増えています。
比べてもらう・相談してもらう・依頼してもらう
③ 比べてもらう:信頼できそうだと思ったお客さんは、次に他の業者と比べます。外壁塗装では、2〜3社から見積もりを取る「相見積もり」が一般的です。料金の目安を載せる(「30坪の戸建てで、シリコン塗料なら〇〇万円前後」のように、目安があるだけで相談しやすくなります)。見積書の見方を説明する(足場、高圧洗浄、下地補修、塗料の種類と塗る回数など、何にいくらかかるのかを説明するページがあると、「価格が分かりやすい、正直な業者」という印象になります)。施工事例に、費用と工期も添える(実際の事例と一緒に示すと、お客さんが自分の家に置き換えやすくなります)。
安さだけで勝負する必要はありません。お客さんが重視しているのは、工事の質と価格の分かりやすさです。「なぜこの金額なのか」を丁寧に説明できる塗装店は、相見積もりの中で選ばれやすくなります。
④ 相談してもらう:「見積もりを頼んだら、しつこく営業されるのでは」という不安も、相談をためらう大きな理由です。現地調査の流れ(何を見るのか、時間はどのくらいか)を説明する。「見積もりだけでも大丈夫です。無理な営業はしません」とはっきり書く。電話が苦手な人のために、LINEや問い合わせフォームでも相談できるようにする。
⑤ 依頼してもらう:現地調査では、外壁の状態を写真で見せながら、今すぐ必要な工事と、まだ急がなくていい工事を正直に分けて説明します。不安をあおらず、選べるように説明してくれる業者は、それだけで信頼されます。
⑥ また頼んでもらう・紹介してもらう:外壁塗装は、10年ほどで次の塗り替えの時期がやってきます。満足したお客さんは、ご近所や親戚に紹介してくれます。工事後1年、5年などの定期点検で、お客さんとのつながりを保つ。年賀状や季節の便りを送る。紹介してくれたお客さんへのお礼の仕組みをつくる。地域で長く続いている塗装店の多くは、この「⑥」が一番の集客源になっています。一件一件の工事を丁寧に仕上げることが、結局は最も強い集客になります。
一括見積もりサイトとの付き合い方
一括見積もりサイトは、すぐに問い合わせが来る便利な仕組みです。ただし、紹介料や手数料がかかるうえ、お客さんは最初から複数社を比べるつもりで来るため、価格の競争になりやすいという面もあります。
一括見積もりサイトは「仕事が少ない時期の補い」と考え、自社のホームページやGoogleマップ、紹介から直接依頼が来る流れを、少しずつ太くしていくのがおすすめです。直接の依頼が増えるほど、手数料がかからず、価格だけで比べられることも減っていきます。
確認したい数字
集客がうまくいっているかを確かめるには、毎月次の3つの数字を見るだけで十分です。
| 数字 | 分かること |
|---|---|
| ホームページを見た人の数 | ①知ってもらう段階がうまくいっているか |
| 現地調査・見積もりの依頼数 | ②③信頼され、比べて選ばれているか |
| 契約した件数 | ④⑤相談から依頼までがうまくいっているか |
例えば、ホームページを見た人は多いのに見積もりの依頼が少なければ、ホームページで「信頼してもらう」「比べてもらう」ための情報が足りていない可能性が高い、と分かります。見積もりの依頼は多いのに契約が少なければ、現地調査での説明や、見積書の分かりやすさを見直す、という具合です。
止まっている場所が分かれば、やるべきことが一つに絞れます。
費用の目安は、30秒でできる見積もりシミュレーターで確かめられます。
避けたい打ち出し方
不安をあおる:「今すぐ塗らないと家が大変なことになる」といった表現は、点検商法の業者と同じ印象を与えてしまいます。状態を正直に伝え、お客さんが選べるように説明します。
実態と違う「無料」や「値引き」をうたう:「足場代無料」「今だけ半額」といった表現は、実際には他の項目に費用が含まれていたり、いつでも同じ価格だったりすると、お客さんを誤解させる表示として問題になるおそれがあります。お客さんの信頼を失う原因にもなります。
全部を一度にやろうとする:チラシ、Googleマップ、ホームページ、一括見積もりサイト、SNS。すべてを同時に始めると、どれも中途半端になります。3つの数字を見て、止まっている場所から一つずつ直していきます。
制作現場から
「足場代無料」「今だけ半額」などの打ち出しは、見た目のインパクトはありますが、見積もりの内訳がサイトにないと不信感につながりやすいです。料金の目安や見積書の見方を書くページを足した案の方が、「価格が分かりやすい業者」として比較に残りやすい、というのがデモ比較で何度も確認してきた感覚です。
次の一歩として、ホームページに「代表者の顔写真・会社の所在地と歴史・突然の訪問営業はしていません」の3点が載っているかを確認してみてください。②信頼してもらう段階で止まっている場合、ここを整えるだけで見積もり依頼につながりやすくなります。
よくある質問
- Q. 外壁塗装の集客は、何から始めればいいですか?
- A. まず、対応する地域と得意な工事を決めましょう。そのうえで、Googleマップへの登録と、代表者の顔や施工事例が分かるホームページを整えるのがおすすめです。外壁塗装はお客さんが業者を警戒しているため、「信頼してもらう」ための情報が特に重要です。
- Q. チラシを撒いても反響がありません。
- A. チラシは1回で反響を期待するより、地域を絞って繰り返し配ることが有効です。また、チラシを見た人の多くは、電話する前にネットで調べます。チラシにホームページの案内を入れ、ホームページで信頼してもらえる情報を揃えておきましょう。
- Q. 一括見積もりサイトは使った方がいいですか?
- A. すぐに問い合わせが来る便利な仕組みですが、手数料がかかり、価格競争になりやすい面もあります。仕事が少ない時期の補いとして使いながら、自社のホームページや紹介から直接依頼が来る流れを育てていくのがおすすめです。
- Q. ホームページに料金を載せた方がいいですか?
- A. 目安だけでも載せることをおすすめします。お客さんは工事の質とあわせて、価格の分かりやすさを重視しています。「30坪の戸建てでこの塗料なら〇〇万円前後」のような目安や、見積書の見方の説明があると、相談しやすくなります。
- Q. 下請けの仕事から、元請けの仕事を増やすにはどうすればいいですか?
- A. 地域を絞り、「地元の、顔が見える塗装店」として知ってもらうことから始めましょう。Googleマップ、施工中の現場、チラシで知ってもらい、ホームページで信頼してもらい、工事後の点検や紹介でつながり続ける。この流れを一つずつ整えることが、元請けの仕事を増やす近道です。
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